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Vol.18 筆の里工房
日本一、世界一!?
筆の都で匠の技に超接近

「熊野町といえば?」「化粧筆!」。
女性の9割がそう答えそうなほど有名な熊野筆。もともと熊野筆の始まりは江戸時代の書筆づくり。でも画筆や化粧筆の生産は実は昭和に入ってから始まったというから、意外や意外、最近の話だ。今や書筆とともに全国一のシェアを占めるのは言うまでもない。
今回は化粧筆でないけれど、伝統の技を間近で見たり書筆づくりができるという「筆の里工房」を訪れてみた。
興味津々足を踏み入れると、そこは筆、筆、筆…筆だらけの世界!

筆の里工房

うわぁ~~っ!!とにかく大きい巨大筆。なんとその重さ400㎏で世界一。

上質な化粧ブラシが並ぶ展示コーナー

見るからに上質な化粧ブラシが並ぶ展示コーナー。ハリウッド女優のメークにも愛用されるほど海外でも人気とか。恐るべし筆力。

化粧筆で喜怒哀楽を綿密に表現

化粧筆で喜怒哀楽を綿密に表現。超リアルな線も熊野筆の成せる技だ。

匠の技を拝見、そして体験!

「こんにちは~」「……」。「筆司の家」(展示コーナー奥)を覗くと、黙々と筆づくりに打ち込む「熊野筆伝統工芸士」の南部豊彦さんの姿が見える。

工程

「穂首(ほくび:毛の部分)づくり」から筆軸に銘を彫る「銘彫刻」まで70以上の工程を経て、ようやく1本の筆が生まれる。南部さんは山羊の毛を使った穂首作り専門。

衣毛巻き(ころもげまき)

選毛や毛組みは腕の見せどころ。注文主に喜んでもらうため毛の種類や配合を慎重に考えて選毛、一本もはみ出ないよう入念に組んでいく。

さて、早速体験!体験できるのは2工程「衣毛巻き(ころもげまき)」と「仕上げ」。2つだったら私でもできるわ~!なんて、甘かった…。

まずは「衣毛巻き」。あらかじめ形が整えられた穂首の芯の周りに、衣毛というより上質な毛を巻いていく。

半差し

「半差し」という道具で上質な馬の衣毛を均一に広げる。なかなか難しい…。

穂首

ジャーン、なんとか衣毛を芯に巻き付けて穂首の形になりました。

この後、毛の根元を麻糸で結び焼きゴテを当て、すばやく焼き締める「糸締め」、筆管に穂首をすえつける「くり込み」という工程があり、それは南部さんにお任せして・・・。軸(筆管)にすえつけられた穂首に糊をたっぷりと含ませる「仕上げ」の作業を体験。しかし、これがなかなかの力作業で・・・。

「これでもか~!というほど力を込めて、苦手な人を思い浮かべてくださいよ(笑)」。筆に糊をたっぷり含ませるコツを、そうお茶目に話す南部さん。

「手が痛くなってきました~」「まだまだですよ!」(笑)「エ~ッ?!」

「仕上げ」ではスーッと糸で絞るようにして筆の余分な糊を落とす。それにしても先人の知恵が生んだ道具はシンプルで、無駄がないなぁ。

…と1回ではうまくいかず、ハイもう1回。

筆

マイ筆完成。大切に使いたい。1週間前までの予約で軸に名前を彫ってもらえる。

筆とともに暮らす熊野町の人々

「昔から熊野町では農業の副業として、家族の共同作業で筆づくりを行っていました。私も小さい時から手伝いを始めて、だんだんそれが小遣い稼ぎになってね」と南部さん。なんとなんと、一本「エッ?〇百万円!」もする書道家の特注品を手掛けることもあるという匠の腕は、すでに幼少期から培われていたのだ。

南部さん

筆について話されるとき、南部さんの目は格別キラキラ。

熊野町あるある的なお話は、主任の柚山歩未さんも一緒になって盛り上がる。「熊野町では小学1年生から書道の授業が始まって、町内の小・中学生は2回も筆づくり体験をするんです」(柚山さん)。なるほど~、きっとこの町には書道名人が多いに違いない。

「書き味が全然違いますよ!」早く試してみたいな。

筆

「柔らかい!」「リスの尻尾の毛はすごく柔らかくて主に化粧筆に使われるんです」。ヤギや馬、タヌキ、リスなどそれぞれの動物の毛質を活かした筆が生まれる。

「熊野筆セレクトショップ本店」には町内32業者の筆、約1,500種類を販売。筆選びでわからないことがあればスタッフに気軽に尋ねてみよう。

ショップ

ショップは入館口手前にあるのでもちろん料金は不要です。ぜひ!

一本一本職人の手で生まれる伝統の技が、今も暮らしの中で生き続ける素晴らしさ。滅多に見られない伝統工芸士さんの実演や貴重なお話、そして筆づくりは驚きと発見の連続。子どもの学びの場としてもいい機会。

筆の里工房について詳しくはこちら
※平成30年11月5日から翌年4月下旬頃まで、施設改修工事のため臨時休館を予定しています。

(2018年6月取材)

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